オゾン療法の歴史Historyについて調べてみました


オゾン療法の歴史を一まとめしたものが日本語では見当たりませんでしたので、ひょっとすると唯一かもしれません。

オゾン療法の歴史認識はあいまいです。標準化がなされていないために、情報の統一がなされず、ゆえに膨大な歴史認識が様々な業界団体の手に分断化された状態で留まってしまっている模様です。海外を中心にたくさんの業界団体や施術者のHPから学ばせていただきました。

1.オゾン療法の歴史History

1-1.オゾンの発見

1785年、ドイツ人でオランダの化学者 Martinus Van Marumが空中放電で生ずる臭いを発見します。イギリスの発電機メーカー(John Cuthbertson社)で巨大発電装置の開発に携わっていた彼は、発電装置が大きければ大きいほど生ずる臭いが強くなることを発見します。彼はこの臭いを「電気の臭い(the odor of electrical matter)」と記録し、水銀を変色させるほどの強い「放電」で発生すると特定しましたが、はたしてそれが酸素と同じ構造を持つガスで、しかも、まだ発見されていないものであるとまでは考えませんでした。

このガスは、1840年にC.F.Schonbein(シェーンバイン)によって「オゾン(Ozone)」と名づけられるまで、55年もの間、名前がないままでした。シェーンバインは酢水の電気分解している間に遊離した酸素にその同じ特異臭を見出し、ギリシア語の「臭い(ozein)」をもじって「ozone」と名づけました。シェーンバインはドイツ人でスイス・バーゼル大学の化学者でした。鉄砲の導火線に使われる綿火薬(ニトロセルロース)の発見者として有名な人です。

1-2.オゾン発生装置(ozone generators)の誕生

オゾンガスはとても不安定な物質で貯蔵しておくこともできず、化学反応も起こしやすいため、使用する直前に生成する必要があります。近代西洋医学がペニシリンの発見によって一気に医療の主役に躍り出たように、オゾン療法も安定的にその場でオゾンを発生させる装置の出現が成長のためには不可欠でした。

1857年、ドイツのWerner von Siemens(シーメンス)が世界で最初となるオゾン発生装置(ozone generators)の設計に成功します。シーメンス氏は世界的巨大企業シーメンス社(SIEMENS)の創業者です。

1896年、Nikola Tesla(ニコラ・テスラ)がオゾン発生装置を発明し特許を取得します。1900年にはthe Tesla Ozone Companyを設立。彼は医療用にオゾン発生装置を医師に販売します(医療用途に製造された機器ではありません。)。ニコラ・テスラは交流電力を発明するなどした天才で、ハンガリー王国に生まれニューヨークで96歳で死亡。

1935年、Dr.Joachim Hanslerが初めて、医療専用のオゾン発生装置を作ります。

1957年、Dr.Joachim Hanslerは以後35年にわたってドイツでオゾン療法が拡大するための重要な土台を作ったオゾン発生装置で特許を取得します。以後、医療としてのオゾン療法が大きく発展していきます。

1-3.一般分野でのオゾン利用

1873年、Foxは微生物を排除するためにオゾンが有効であることを発見します。(オゾンの殺菌作用が発見。

1893年、オゾンを使った世界で最初の水処理施設がオランダのOusbadenに誕生します。

1905年、フランスのNeceに浄水プラントが建設されます。

1970年、日本で最初の浄水プラント尼崎神崎浄水場が稼動を開始します。

水処理施設でのオゾンの利用目的は殺菌と脱臭で、世界3,000以上の都市で上下水をきれいにするために使用されています。

1-4.オゾン療法の歴史【日本のばあい】

日本では100年近く前に既にオゾン療法が入ってきていたにもかかわらず認知がなく、今に至ってようやく海外から再流入によって日の目を見ようとしています。

  • 1911年(明治44年) 東京帝国大学医科大学を卒業した呉建医師がドイツ・オーストリアに留学(〜1913)
  • 1923年(大正12年) 九州帝国大学内科学教室(呉健教授)の尾川正彦博士が、オゾンガス発生器を作成
  • 1923年(大正12年) 九州帝国大学附属病院第一内科 皮下注射法によるオゾン療法を開始
  • 1925年(大正14年) 呉建教授が九州帝国大学から東京帝国大学に移動(呉教授=循環器病学・神経生理学の権威)
  • 1938年(昭和13年) 日本大学駿河台病院にオゾン療法を行う科が誕生。皮下注射法が行われる。主任は九大から尾川正彦博士。
  • 1975年(昭和50年) 日本大学駿河台病院 尾形利二医師(歯学部)が以後20年にわたり皮下注射法によるオゾン療法を臨床応用。症例数は1万例を超えるという。
  • 1994年(平成06年) 日本医療オゾン研究会 設立
  • 1999年(平成11年) 日本医療オゾン研究会が日本医療・環境オゾン研究会と名称変更
  • 2009年(平成21年) 日本オゾン療法研究会 設立
  • 2010年(平成22年) (社)日本酸化療法研究会 設立
  • 2011年(平成23年) 日本医療・環境オゾン研究会が日本医療・環境オゾン学会に名称変更

1-5.オゾン療法の歴史【ヨーロッパのばあい】

オゾンが発見されて16年後の1856年、ホメオパシー医(homeopath)のJoseph Lloyd Martinが手術室や手術器具の殺菌消毒にオゾンを使用しました。★ヘルスケア分野ではじめてオゾンを活用

19世紀も後半になるとオゾンは、様々なバクテリアやウイルスを殺菌して水浄化するためにヨーロッパ全域で使われるようになります。(*1-3.一般分野でのオゾン利用の項参照)

1870年、ドイツのDr.C.Lenderが日常的にみた生物学的影響という本を出版します。水の消毒について考察した最初の本です。彼はこの年、オゾンを使って試験管の血液浄化を行ったと告知しています。★医療分野ではじめてオゾンを使用です。オゾンの抗菌特性は、ペニシリンが出現(1942年)するまでの70年間、とても活躍します。

1881年には既に殺菌剤として医療でオゾンが使用されていたと、Dr.Kelloggが自身のジフテリアの本で言及しています。

1892年、結核治療におけるオゾン利用について書かれた論文がThe Lancet(イギリスの著名な医学雑誌)に掲載されました。これがヨーロッパで最初に書かれたオゾンの医療用途の論文とされます。(アメリカではそれ以前の1885年に、フロリダ医師会がオゾンの医療利用について出版されています。)

1896年、Nikola Tesla(ニコラ・テスラ)がオゾン発生装置を発明し特許を取得します。1900年にはthe Tesla Ozone Companyを設立。彼は医療用にオゾン発生装置を医師に販売します。同時にオゾン化したオリーブオイルを自然療法の医師に販売します。ニコラ・テスラは交流電力を発明するなどした天才で、ハンガリー王国に生まれニューヨークで96歳で死亡。

1898年、the Institute for Oxygen Therapy Healing(酸化療法研究所)が2人のドイツ人医師ThauerkaufとLuthによってベルリンでスタートします。彼らは動物にオゾンを注入します。また、オゾンにマグネシウムを結合させた「Homozon」という製品を開発します。

1902年、ロンドンで刊行された「A Dictionary of Practical Materia Medica(実践的な薬物療法辞典:JHClarke著)」には、貧血、癌、糖尿病、インフルエンザ、モルヒネ中毒、潰瘍性口内炎、ストリキニーネ中毒や百日咳の治療に、オゾン化された水を使うことが有効であると記述されています。

1902年、「The Lancet」が、慢性的な中耳の難聴治療がオゾン療法でうまくいったと主張する記事を掲載します。

1913年、ドイツに「the Eastern Association for Oxygen Therapy(東方酸化療法協会)」がDr.Blassらによって設立されます。

第一次世界大戦(1914〜1918)では、ドイツ軍医療サービスの外科医のチーフであったAlbert Wolf(ベルリン)主導のもと、傷の治療や塹壕足炎(長時間冷湿気不潔な状態に足を置くことで生じる感染症。重症は壊疽で切断。)、壊疽(えそ)、さらには毒ガスによる後遺症を治療する目的でもオゾン療法が使用されるようになります。
Albert Wolf医師は大腸がん、子宮頸癌や褥瘡性潰瘍(じょくそう)の治療にもまた、オゾンを使用します。オゾンの殺菌作用から感染症の治療薬になることは判っていましたが、患部の血行が改善され抗炎症作用もあることがこれによりわかりました。★抗炎症作用の発見です。
参考|塹壕足炎の写真と説明

1926年、Kaiser Institute(カイザー研究所、ベルリン)のOtto Warburg(ワールブルグ)博士は、癌の原因が細胞レベルでのオゾン欠乏にあると発表します。ノーベル生理学医学賞を1931年と1944年に受賞しているドイツの生化学者。

1930年になると、歯科治療でオゾンを利用していたスイスの歯科医Dr.Fish が、虫歯治療におけるオゾンの使い道について論文を書きます。彼はオゾン発生装置(特にCytozonというアプリケーション)の特許も取得している学者です。

1932年、スイスの歯科医Dr.Fish はドイツの外科医Erwin Payrにオゾン療法を紹介します。これ以降、Erwin Payrはオゾン療法を治療に活用していきます。★酸化療法としてオゾンの活用、現代オゾン療法の日の出といえます。

1935年、ライプチヒ大学(ドイツ)の教授だったErwin Payrは「外科手術におけるオゾントリートメント」という論文を発表します。彼はオゾンを外科手術に最初に利用した外科医として知られていますが、外科手術においては殺菌目的でオゾンを使用しました。

1934年〜1938年までフランスの医師AubourgとLacosteは、治療としてオゾン注入を行っていました。Aubourgは1938年に「医療用オゾン(Medical Ozone): 生産そして臨床における投与量と手法」を書きます。彼はオゾンを直腸内や膣内の病んでいるところから吹送することで入れました。使用した8,000ものアプリケーションにおいて、重篤な副作用は全く無かったということです。★オゾンの直腸注入のスタート

1935年、フランスのM.Sourdeauが「Ozone in Therapy」を出版します。

第二次世界大戦(1939-45)中の1940年代、オゾン療法の最も古典的なバイブルである医学書「Medical Ozone」がDr. Hans Wolff によってドイツで出版されます。

1935年、Dr.Joachim Hanslerが、初めて医療用オゾン発生装置を作ります。

1953年よりドイツのDr. Hans Wolff(Medical Ozoneの著者)はたくさんの医師にオゾン療法の教育を行い始めます。★

1957年、Dr.Joachim Hanslerは以後35年にわたってドイツでオゾン療法が拡大するための重要な土台を作ったオゾン発生装置で特許を取得します。★オゾン発生器の改良

1961年、Dr. Hans Wolff は大量自家血液オゾン療法と少量自家血液オゾン療法の、それぞれのテクニックを紹介します。
★自家血液オゾン療法が開始

1977年、Dr. Renate Viebahnはオゾン療法におけるオゾンが起こす作用機序を規定しました。?

1979年、Dr. George Freibott はカポジ肉腫が生じているハイチ人のエイズ患者にオゾン療法を行い効果があったと発表。1980年、Dr. Horst Kiefもまた、エイズ患者にオゾン療法が有効であったと報告。

1987年、Rilling 博士とViebahn 博士は、オゾン療法における標準的な教科書となりうる「The Use of Ozone in Medicine」を出版します。

1-6.オゾン療法の歴史【アメリカのばあい】

ヨーロッパに生まれたオゾン療法はほどなくアメリカにも伝わります。ところがアメリカ医師会という政治力の強い団体が台頭してくると排他的な要素を強く打ち出します。オステオパシーやカイロプラクティック、オゾン療法などたくさんの医療が異端視され、禁止されます。
そういった歴史を経て、再び、オゾン療法はアメリカでも日のあたる場所に登場しつつあります。
では以下、年代順に歴史を見てみましょう。

1880年 Dr.John H.Kelloggによりアメリカで初めて、医療目的でオゾンが使用されます。彼はミシガン州にある自分のサナトリウムで、ジフテリア患者の殺菌消毒にオゾンスチームサウナを使ったと記録。

オゾンを使用した治療方法について書かれた英文での最初の記録が、フロリダ医師会が1885年に出版した医学雑誌に掲載された論文で題名が「オゾン(Ozone)」。Dr.Charles J. Kenworthy医師が著者。

1898年以降、ニューヨークで開業するドイツ人医師のDr.Benedict Lust(ベネディクト・ルスト)はオゾンに関する多くの記事や書籍を出すようになります。自然療法Naturopathyの創始者。

1911年に「A Working Manual of High Frequency Currents(高周波電流のマニュアル)」を執筆・出版したDr.Noble Eberhart医師は、 ロヨラ大学(Loyola University、シカゴ)で生理学的治療を行う部門の責任者であったが、彼もオゾンを治療に使用していました。
結核、貧血、 萎黄病(いおうびょう)、耳鳴り、百日咳、喘息、気管支炎、花粉症、不眠症、肺炎、糖尿病、痛風や梅毒などの治療に使用。彼は医学教育にオゾン療法を取り入れた最初の人だとされています。

1920年、Charles Neiswanger医師(シカゴ病院の医科大学長)が「Electro Therapeutical Practice(電気治療の実践)」を出版しました。その第32章のタイトルは「Ozone as a Therapeutic Agent(治療薬としてのオゾン)」。

1929年、「Ozone and Its Therapeutic Action」が出版。114の疾病に対するオゾン治療を収録。著者は主要なアメリカの病院のトップたちでした。

1933年、Dr. George H. Simmonsと弟子のDr. Morris Fishbein が強権を振るっていたアメリカ医師会(AMA)は、薬物療法と競合するあらゆる医学的治療の締め出しに乗り出しました。オゾン療法への弾圧もこの時期から始まります。

1940年代に入ると、AMA(アメリカ医師会)の強い要請によってFDA(アメリカ食品医薬品局)がオゾン発生装置の押収も行うようになっていきます。

1948年、Dr. William Turska(オレゴン)が自分で設計した機械を使ってオゾン療法を始めます。

1951年、Dr. William Turskaは「酸化(Oxidation)」という論文を書きました。彼はオゾンを静脈に注射する方法のパイオニアで、オゾンを肝臓まで届かせました。

第二次世界大戦中に、Dr. Robert Mayer(アメリカ)はドイツ人の戦争捕虜からEllis島でオゾン療法を学び、以後45年間というものオゾン療法を治療に用います。

FDAは2001年から食品を保存するための殺菌剤としてのオゾンは認可します。アメリカのアンチエイジング医学会の一つであるACAMでは、近年オゾン療法を取り上げるようになってきました。

アメリカでオゾン療法は代替療法とされていますので、代替医療の法律に批准した州以外ではオゾン療法を受けることができません。アラスカ、カリフォルニア、コロラド、フロリダ、ジョージア、ミネソタ、ニューメキシコ、ネバダ、ノースカロライナ、ニューヨーク、オハイオ、オクラホマ、テキサス、ワシントンの14州は署名しているため、オゾン療法を受けることが可能です。

多くの英語圏において、オゾン療法はいまだ衛生当局や医師会から支持されていませんし、上記14州以外の州では医療用オゾン発生装置の売買が禁止され、オゾン療法の研究や臨床試験さえも禁止されています。アメリカでこの禁を破れば医師免許剥奪になります。

1-7.オゾン療法の歴史【その他の国のばあい】

1878年、オーストラリアにおけるオゾン療法のパイオニアがDr.Dayで、「オゾン療法と天然痘、しょう紅熱(Ozone Treatment and Scarlatina and Smallpox)」を書きます。

1990年、キューバでは、オゾンを使っての緑内障(glaucoma)、結膜炎(conjunctivitis)、網膜色素変性(retinitis pigmentosa)の治療に成功したと報告。

1992年、ロシアのオゾン療法テクニックが明かされた。火傷を負った人を治療するのに、血管の中でをオゾンを泡立たせるというもので、結果は驚くべきものでした。

参考資料

  1. 参考:Martinus Van Marum http://www.lateralscience.co.uk/marum/index.html
  2. 参考:Martinus Van Marum http://en.wikipedia.org/wiki/Martin_van_Marum
  3. 参考|大阪教育大学HP>化学教育ジャーナル>ニトロセルロース:
  4. 参考:シェーンバイン http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~sawada/plastic/nitro.html より
  5. 参考:シェーンバイン http://ja.wikipedia.org/wiki/クリスチアン・シェーンバイン
  6. 写真|シェーンバインhttp://www.wholisticpetmed.com/The%20use%20of%20ozone.htm
  7. 水処理施設でのオゾン利用|http://www.ecodesign-labo.jp/ozone/info/2-2.php
  8. http://www.oxygenie.com/ozone-story-history.php
  9. http://lloydwright.org/messages/content/history-our-medical-system-scary-true
  10. http://www.ozonehealthy.com/index.php?option=com_content&view=article&id=13&Itemid=10
  11. http://www.aepromo.org/en/historia.php
  12. http://ozonescience.blogspot.com/2007/12/ozone-history-nikola-tesla.html
  13. http://www.ecodesign-labo.jp/ozone/info/2-2.php
  14. http://en.wikipedia.org/wiki/Erwin_Payr
  15. http://en.wikipedia.org/wiki/Ozone_therapy
  16. http://www.falconblanco.com/health/supplements/homozone.htm
  17. icd-9 / health information|http://www.lumrix.net/health/Ozone_therapy.html
  18. http://www.ozonosan.co.jp/O3thera-ippan9.html
  • Sato Numata

    こんなにきちんとまとめている情報、初めて見ました。感謝。